マイファースト BONORA

こんにちは、ばしです。

 

出会いは7月半ば過ぎ。

偶然通りかかったセカスト。大概行き尽くしたつもりが、おお、こんなとこにもお店があったのね。ちょろりと覗いてみましたところ、「マイファースト~」なやつに遭遇しました。お値段6000円ほどのお買い得な本格靴。おお、これは買いかな。普段なら即決なのですが・・・、思い切れない。

だってね、腰裏にデカい穴が空いた奴です。それも両足とも。アッパーも傷が多く、状態はお世辞にも良いとは言い難い。靴がいくらお買い得とはいえ、修理代を考えると別にそれほど安くはない。

何より、7月はその時点ですでに結構買ってまして、大赤字の見込みです。あのね、申し訳ないけど今月はもうだめなのさ。たくさん買ってお腹いっぱいです。ごめんね、ほかの誰かに拾ってもらってくれ。8月になってもしまだ売れ残ってるようなら再検討するよ。まあ、売れ残ってることなんてないだろうけどね。散々迷った挙句、結局スルーしたのでした。

(参考記事「ゆく靴くる靴(2022年6&7月)」)

 

それから1週間。

月末間際に本格靴が2足売れ、7月の赤字見込みが一転、久々の黒字が確定しました。で、思い出しました。そういえばあの靴、どうしてるだろう。まだ8月にはなってないけど、もし残ってるようなら早めに拾っといてもいいかも。縁があるのなら売れ残ってるだろう。まあ、残ってないだろうけど。売れてりゃ残念だけど、それはそれで靴にはハッピーなことです。などと考えながら、再度お店へ。

残っとりました。絶滅危惧種。

 

 

マイファースト BONORA

名前だけは耳にしたことはありましたが、実物を一度も見たことのなかったBONORAボノーラ。英国靴ライクなイタリアのシューメイカーです。

初見のシューメイカーです。こんなメイカーだそう。

 

 

BONORA ボノーラ

1878年、イタリア・ボローニャで創業。イタリアで最も古い靴メーカーの1つ、それが「BONORA ボノーラ」。創業当時はビスポークが中心で一般市場に流通することが少なく、「幻の靴」と呼ばれることもあったそう。革裁断から仕上げのポリッシュまでの200近い工程を1人の熟練職人が手作業で生産していたため、生靴数は週6足程度と極少だったらしい。

かつてはビスポーク専門であったジョンロブがエルメスに買収され「ジョンロブ パリ」ができあがった当初、レディメイド(既成靴)のプレステージラインの元となるトップレンジの靴の製造を受託していたのがボノーラであったそう。

デザイナーが英国人であったことから、ブリティッシュクラシコとイタリアンエレガンテを兼ね備えたデザインのハンドソーンウエルティッドの靴を製造していたが、2003年に親会社が倒産したあおりで営業停止に。その後事業は再開するも、それまでのような手間のかかる製造は行なわれなくなり全くの別物に。今では倒産前のボノーラは「旧ボノーラ」と呼ばれ、幻の靴としてコレクターアイテム化している・・・。

 

といったシューメイカーだそうです。いろんなサイトの情報をつぎはぎしました。で、今回はコレクターでない私が拾ってきちゃいましたが、まあ、構わんですよね。

そんなBONORA。

踵に切り返しのないシームレスヒール。

土踏まずのウッドネイル。サイズは「8」。UK8っぽいです。

ヴェヴェルドウェスト。かなりイカしてます。

このあたりの仕様が大きな特徴のようです。

ダブルステッチもとても細やかです。

ぼろいですが、高級靴らしい匂いがプンプンします。キレイにメンテして、修理して、かつての輝きを取り戻させたい。そう思い拾ってきた次第です。

お盆休み最終日の月曜日、メンテしました。

いつも通り、まずは左から。

 

 

ステインリムーバー

ライトブラウンのクリームかワックスが塗り込まれてました。

なんといいますか、スカスカです。ワックスは落とされることなく何度も塗り重ねられたような、そんな印象です。お蔭で弱ってヘタってます。トゥの傷もムラも酷いです。

 

LEXOL

アッパーは布で、コバ周りは歯ブラシで。

もうね、ボノーラ、ボロイナ、ってな感じです。

 

グリセリン保湿

せいぜい20年ほど前のペアでしょうが、あまりきちんと手入れされてなかったようです。乾きのほどは分かりませんがフルメンテです。

 

【5時間後】

エアコンの所為もあるのでしょうが、コットンパフは8割がた乾いてしまってます。それなりに保湿されたのでしょうか。はがしてみました。

色が随分濃くなりました。部分的にではありますがライナーまで湿ってますので、概ね浸透したかと思われます。

ね。って、穴が凄いです。革2枚分貫通してます。ちなみに、腰裏の状態はそもそもこんなでした。

これが先程と同じ左足です。腰裏は二重になってるのでしょうか?あるいは一度リペア済なのでしょうか?

右もほぼ同じ状態です。

ね。修理せねばなりません。腰裏全体リペアでもいいのですが、穴の部分だけパッチ貼ったりはできないんですかね。まあ、どっちでもいいんですけどね。

戻りまして、

トゥの傷が気になりますが、勲章ということにしときましょう。サイズ感はUK8と私には少し大きめですので、乾燥の過程で縮んでくれたら言うことなしです。

 

【丸2日経過】

水曜の夜時点です。だいぶ乾きました。

だいぶ乾いて色目が白っぽくなりました。スカスカな感じは変わらず。

「もっちり」とは程遠い感じです。

週末の土曜日にメンテの続きをやる予定です。少し早めですがこの時点で「TAIPIRレダーオイル」入れときました。

ワックスべったりでしたので、こいつで取り切れずに残ってるかもしれない汚れもがっつり綺麗にしよう。汚れを落とし、かつ、油分補給(栄養補給)も同時に行う、それがレダーオイル。中二日ありますのでしっかり浸透した上で乾燥すると思われます。

まずは左から。

少し色が濃くなった程度です。

馬鹿みたくグングン吸い込みます。いつものような油ギッシュな感じが皆無です。水分もそうですが、油分も抜けきっているのかもしれません。

左右左右と、多いかなと思いつつ結局3回塗り重ねました。

それでもすぐに吸い込んでしまうのですが、

まあ、過ぎたるは猶、です。十分でしょう。

 

【丸3日経過】

木曜夜。週末まで休ませるつもりでしたが・・・、もう、すっかり浸透&乾燥してしまって、スカスカな感じに戻っちゃいました。

よし、ここは「追いオイル」だ!

クリストフポーニーレザーセラム。こいつで「おいおい」です。

スポイトでたらりと垂らして、

指で塗り広げる!

おおっ、迫力満点な写真が撮れました。

うーん、いいですねえ。油がギラリと光ります。

最初からこっちにしとけば良かったな。

右足にもたっぷりと。

このあとは追加はなしで。
ほんとにほとんとに、週末まで休ませまよう。と思っていたら・・・、

 

コロナになってしまいました。

 

「週末まで休ませよう」だなんて、、こちらが10日も休む羽目になっちゃいました笑。玄関横の寝室で隔離生活です。いやあ、10日は長かったです。

ただ、幸いになことにこのペア、コロナ以前から寝室で「追いオイル」などの作業をしていたのでした。おかげで多少の退屈しのぎにもなったわけですが、眺めておりましたところ、何もしないでいたらまた乾燥してきました。

 

なもんで、コロナの熱がようやく治まった月曜日夕方。

普段使ってる化粧水など入れてみました。ええ、ヒト用です。自分用です。

ビタミンCはオッサンにも古靴にも良さそうです。

おお、しっとりします。
まあ、水分入れたらそうなりますね。当たり前か。

 

さて、今度こそ、週末の土曜日。

羽根周りはずいぶん改善しました。

爪先と甲はスカスカです。

右には傷に汚れも。

さて、体調もかなり回復しましたので、外での作業を再開です。

 

 

TAPIR  レダーフレーゲ

だいぶ前にレダーオイルと間違ってネット購入したやつです。使い方がよくわからなくてお蔵入りさせておりました。

乳液タイプのメンテグッズ。どうやらこいつ、シューケアグッズの中でも特にオーガニックなことで有名らしい。

使い分けですが、

レダーオイル:汚れを落としながら栄養補給
レダーフレーゲ:ツヤを出しながら栄養補給

ということのようです。

BONORAのアッパーが少々弱ってるように思えたため、今回は色はなし、カラーレスで。尚且つ、あれこれ入れずに仕上がてみることにしました。

よく振って布にとり、アッパーに均等になじませる。まずは左のみ、5分ほど放置したらブラッシング。

どうでしょう。

うーん。

なんともかんとも。

今回、「仕上げはこいつだけで」、と思っていたのですが、そうは問屋が卸さない感じです。一度では足りないようなので、3度ほど塗り重ねた上で、さらに追加施術です。

ワックスで仕上げましょう。

 

 

M.MOUBRAY トラディショナルワックス

最近使い始めたニュートラルのワックス。素人な私でも簡単に光らせることができるやつです。

とりあえず左に入れてみましたが効果はなかなかのようです。

さて、右も仕上げて、新品の靴紐を通したらメンテ完了です。

 

【BEFORE】

【AFTER】

良くも悪くも別物のようになりました。アッパーの肌理の細かさはかなり復活したような。

 

【BEFORE】

【AFTER】

うん、グッドです。形もだいぶ整いました。

紐は平紐に交換しました。

キズは隠しようもないですが、まあ、いい味出てる、ということにしましょう。

うん、拾ってきてよかったです。なんてったって幻の靴です。絶滅危惧種です。そんな響きに弱い私です。これは自分自身で大切に履こう。

とはいえ、ソールはこんなです。

見た目ほど傷んではいなのですが、グリセリン保湿の名残もあり、お世辞にも綺麗とはいえない。早めの手当てがベターかもしれません。腰裏と合わせて修理してもらいましょう。

 

で、サイズ感確認はそのあとにしよう。多分、まだ若干大きそうですが、グリセリン保湿後の乾燥の過程で、少しばかりは縮んでいるはずです。

中敷き1枚でなんとかなるのではないか。

 

再度、全景。

 

 

おお、渋いですね。

手持ちの靴はラウンドトゥのペアが多いので、ややロングノーズ気味なこのスタイルは妙に新鮮です。

秋に、スーツの足元に映えそうです。

コロナの所為で予定が10日ほど先送りになってますが、ま、焦ることはない。秋まではまだ少し時間があります。

 

早速、BONTAさんでお願いすることにしよう。腰裏補修と、ソールはハーフラバー装着してもらうつもりです。来週あたり、仕事帰りに入院させます。戻ってきたら早々にご報告いたします。

(2022/09/30追記:修理完了しました「BONTA de 靴修理(その8)」)

楽しみ。

 

(おしまい)

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