こんにちは、ばしです。
以前は、それこそ数年前までは、セカストなどでも米国製のアリストクラフトをしばしば見かけたわけですが、ここ最近リユースショップで遭遇するジョンマー(ジョンストンアンドマーフィー)は「米国製」ではなく「日本製」のモノが大半のように思う。いや、リユースショップのみならずメルカリなどWEB上でも同様の傾向にあるかも。
理由は至極単純。
ビンテージ靴は、時間の経過とともに旧い年代のものから減少していくわけで、この宿命からは逃れられない。ジョンマーも例外でないわけですが、ジョンマーの場合、旧いものは米国製で、年代の新しいものは「チヨダ」「リーガル」「大塚製靴」によるライセンス品の割合が多くなっている。結果として、ここ最近のリユースショップの棚でお目にかかるジョンマーはMADE IN JAPANの刻印の入ったモノの割合が増えている、ということかと思います。
一般論としては、ライセンスモノは往々にして品質やその評価が低いことが多いわけですが、ジョンマーについては例外のようです。何せ、製造がリーガル(のアッパーラインを担うチヨダ)に大塚製靴ですので、品質は折り紙つき。加えて、新品の価格もそれなりに高価だったこともあり、革靴好きな人の元で丁寧に扱われていたのか、コンディションも良好なモノが多く、そんなこともあってファンも多い。
そういえば、つい先日のなおけんたさんのブログのペアも日本製のジョンマーでした(「デッドストック 日本製ジョンストン&マーフィーの真実」)。また、日本製のジョンマーを多く持っておられる「まめの身づくろい」さんて方がブログで当時のカタログなども紹介されていたりして、収集にはありがたい環境も整いつつあるみたいです。
今回は、チヨダ製のジョンマーのカタログにも掲載されているのと同じモデルをメルカリでゲットいたしましたのでご紹介です。
Johnston and Murphy ARISTOCRAFT
ジョンマーのペアです。で、後で紹介しますが、アッパーラインのARISTOCRAFTアリストクラフトのペアです。今回のペアの特徴は、
タッセルの装着された靴紐と、
ラバーのアウトソールです。
あまり見かけないスタイルのラバーソールですが、
Vibram ビブラムのソールです。
で、ようよう見てみますと、
apollo
とあります。「アポロ」と名付けられたビブラムのモデルだそうです。いやあー、初めて見ます、ビブラムのアポロ。ググってみたところ、1件だけヒットしました。
スペイン語のamazonのサイトです。
「#339」というのが品番らしい。で、残念ながらすでに在庫はなくて入庫予定も未定とのこと。廃版になってしまっているのでしょうか。とすれば、今回のペアは結構希少なのかな。
と思っていたら、
「まめの身づくろい」さんの記事より画像拝借いたします。こちら、チヨダシューズ株式会社が発行した1990年~1991年のジョンストンアンドマーフィーのカタログなのだそうですが、左下のペアに注目!
おおっ!
今回と同じソールです!かつ、今回同様のタッセルの装着された靴紐のペアであります。「GREER 5601」とあります。品番5601でGREERとのモデル名のようです。今回のペアはこのペアなのか、
と思ったけど、
私のペア。「5601」との数字はどこにもないし、印字のスタイルも日本製ジョンマーとは異なる。何より、
「ARISTOCRAFT」の上に「U.S.A.」の文字が。1960s頃の古い米国製と1990s前後の日本製のARISTOCRAFTには「USA」表記がないわけですが、今回のは「USA表記あり」です。米国製のアリストクラフト、ということのようです。
では、
このペアはなんなのか、ということになる。
まめさんの記事「チヨダジョンマーと米国ジョンマー」にその答えがありました。それによりますと、当時のチヨダ製のジョンマーは、本家米国製のジョンマーのモデルを忠実に再現しつつ、日本独自の「モデル名」を付けていたのだそうです。カタログの冒頭に以下の文言があるらしい。
チヨダシューズはJ&M社の靴作りの理念と同じ理念を持つことから出発し、J&Mとライセンス契約を結びJ&M社の靴と全く同じJ&Mシューズを作りだしました。素材のほとんどはJ&M社指定のものを輸入し、デザインはオリジナルそのままです。ただ足入だけはJ&Mの持つムードをそのままにして日本人に合うように改良しております。基本的にはJ&Mシューズは日本で買っても、アメリカで買っても全く同じものが買えるということが前提です。
なるほど。素材のほとんども同じものということで、ラバーソールまで全く同じということらしい。で、いいですね。ジョンマーへリスペクトしつつも、「同じものが作れる」という自社の技術力への自負心も感じられる文章で、これぞ我らが日本のシューメイカーと誇らしくもある。嬉しくなりますね。
で、チヨダのカタログの年代が1990-91年で、すでにあったジョンマーのデザインそのまま、ということですので、
私のこのペアは1980s頃のペア、という可能性が高そうです。ただ、ディテールから年代を感じさせるものはない。
「apollo」と刻印されたビブラムのこのソールからは年代の手掛かりはあるのでしょうか?調べてみたけどよくワカラナイ。
減りも僅かだし、そんな履かれていないのか?
ただ、クラックがちらほら。まあね、これは年代とは関係ないでしょう。
コバ回りのホコリの貯まり具合からはそれなりに旧そうであることはわかるし、年代に関わりなくメンテし甲斐があることは間違いない。何より、
この紐。
紐を外さずにメンテした際にこんな風になりますよね。俺ががっつりきれいにしてやる。いや、その前に一言言いたい。紐くらい横着せんとはずせよ!!
と、愚痴を言ってみたけれど、
なんとこのタッセル。
紐と一緒に縫い留められているようなのであります。外したくとも外せなかった、ということのようです。
おお、僕はこの靴紐とタッセルをどのように扱えばよいのか。
答えが見いだせず、メンテに着手できません。ぶった切って後で縫い留めるか。いや、そんな簡単ではないかも。このままメンテする?いや、それはないな。いっそのことタッセルなしの内羽根プレーントゥとして履くか。今日一日考えよう。その上で、明日メンテに着手します。
うーむ、どうしよう、悩む。
(「アポロソールのJ&Mのメンテ」につづく)